引っ越し先はあたしの隣⁉︎
画面をみて息をのんだ。
呼吸を整える間も無く、電話が切れてしまわないように慌てて出た。
「はっ、も、もしもし!」
あぁ、やってしまったっ……!
《ククク、声裏返ってる》
「わ、笑わないでよ」
《ごめん、ごめん……ってお前ジャマだって言ってるだろーが!!》
──キーン!
隼田くんの大きな怒鳴り声が耳に頭に響いた。
……キーンときた、キーンて。……痛いよ。
《あ、ごめん!耳痛くなかった?まじごめん》
「だ、大丈夫だよ。少し痛かったけど」
《いや、ほんとごめん。こ、いつが、耳くっつけに、来るから、さっ》
北川くんを追い払ってるのか、少しつっかえながら言っている隼田くんにあたしは思わず笑ってしまった。
《おい、なに笑ってるんだよ》
とスネてるような声で聞いてくる。
「ごめん。なんか追い払ってる隼田くんを想像したらなんか笑えてきちゃったから。あと謝ってばっかだなーって思って」
嫌な顔しながら心は笑ってるような感じがして、それにさっきから謝ってばっかだから。
そう思ったらなんか笑ってしまった。
「そういえば、どうしたの?電話してきて」
ちょっと不思議に思ったから聞いてみた。
《あー、本当はメールしようと思ったんだけどさ。コイツ、真人が勝手に電話かけるから、さ──》
そっか。北川くんが。
あ、最後のほうなんて言ったんだろう。小さな声だったから聞こえなかった。
んーでも、あたしもお礼のメールしようとしてたから丁度よかったかもしれない。
「そうだったんだ。あたしもメールしようとしてたんだ!あのお礼言いたくて……」
《あ、じゃ木下から言っていいよ。どうぞ》
え、あたしから……ですか。隼田くんから電話きたのに?
いっか、お礼だけだから。
「えーと、今日はありがとうございました!本当に隼田くんのお陰で、宿題終わらすことができました。ほんとにありがとう!」
《ん、どーいたしまして。教えがいがあったよ》
「わ、笑うな!隼田くんの教え方すごい分かりやすかったよ。ありがとう」
《そりゃ、どーも。てか、木下お礼ばっかだな》
「だって本当に感謝してるんだもん!感謝しきれないかも」
《ふーん。…………じゃあ、さ。花火大会、付き合ってくんない?》
ハイ?
花火大会、ですか。
って、ええええぇええ!
あたしの思考機能が驚いてる。
いや、これはあたしの聞き間違いだ。そう絶対にそう。
「ぁ、えーと。もう一回言ってくれますか?」
どうか、あたしの聞き間違いであって……!!
《………だから、花火大会付き合ってほしんだけど》
ま、まじですか……。
「な、なんであたしなの?」
ほんと、なんであたしなの?あたしよりもっといい人いるでしょ。
こんなのが隣にいても絶対楽しくないと思うんだけど。
いや、あたしがダメだ。耐えられないよ。
《……だめかな?》
な、なんでそんな声で言うのよー。
「……あたしと行っても全然楽しくないと思うよ」
《それ、あり得ないから。絶対楽しいよ。俺が木下と行きたいって思ったんだ。……だから、行かない?》