引っ越し先はあたしの隣⁉︎
隼田くんは北川くんのこと真面目じゃないって言うけど、本当に真面目だと思うよ。
だって、好きな人の名前を『さん』付けで呼ぶくらいなんだもん。
そう思うのはあたしだけなのかな?
だってあたしは『ちゃん』付けだよ?!
真面目さはそれだけじゃないと思うけど。
試験も上位らしいし?
何事にも真剣に取り組んでるみたいだし?
これはなっちゃん情報なんだけどね。
《木下~》
「はーい?」
《……俺のイメージって、どんなん?》
……は、い?
え、え!
突然の質問に慌ててしまう。
は、隼田くんのイメージ……ですか?!
…………意地悪で。
………優しくて。
……頭良くて。
何よりもクシャっと笑った顔。
そんな考え込まなくてもあたしが一番に浮かんだのは彼の笑顔だ。
あたしにいつも向けてくるあの笑顔。
あー、思い出しただけで顔が熱くなってくるなんて。
……よかった、電話で。
目の前でこんなこと聞かれてたらもうダメだよね。
顔が赤いって指摘されそうだもん。
「は、隼田くんのイメージはね、……え、」
《やっぱいい!!言わなくていい!!!
》
『笑顔だよ』と言おうとしたら隼田くんの大きな声が遮った。
思わずスマホから耳を離した。
びっ、くりしたー。
もうさっきから大声出しすぎでしょ、と心の中で笑いながら突っ込んでることは内緒で。
《ご、ごめん。自分から聞いといて……、なんか恥ずいから、さ》
「ううん。あ、あたしも恥ずかしい、かな……」
恥ずかしまじりで笑いながら言った。
なんとなくだけど、隼田くんもあたしと同じように笑ってるって思った。
はぁー、ちょっと助かったかも。
鼓動がだんだん落ち着いていくのがわかる。
少し沈黙が流れたあとに隼田くんの声が聞こえた。
《じゃ、来月の8日な。19時集合だから遅れてくるなよ~》
と最後の言葉に笑いながら言う彼にあたしは「遅れないよ!」と言って笑い合い、お互い電話を切った。