引っ越し先はあたしの隣⁉︎






「おい、俺を置いていくのかよ」


数メートルも離れてない距離から彼の声が聞こえた。


その声に恐る恐る振り返る。


隼田くんやっぱり怒ってるんだ。


だって、声がいつもより低いんだもん。



そんな彼を置いて行くなんてめっそうもないっ!


あたしは隼田くんの近くに駆け寄った。



「そ、そんなっ、隼田くんを置いて行くなんてっ……っ思ってない、よっ」



走ったせいで上手くしゃべれず、つっかえてしまう。


「置いて行こうとしたじゃん」

うう。こわいよ。



「ふつーは、一緒に行くところでしょ?」


あたし、ほんとに怒らせちゃったんだ……。

こんな隼田くん見たことないもん。


もう自分が最低すぎて泣きそうだよ。


謝らなきゃ。


「ご、ごめんなさいっ。……うーっ」



言葉を言い出した瞬間、堪えていた涙が一気に流れた。



「えっ!き、きのした?!え、なんで泣いてるの?!!」

あたしが泣いてるのを見て隼田くんは焦っている。


隼田くんの表情はさっきと正反対で。


急に泣かれても困るよね。


でも、



「はやたくんっ、ごめんなさいっ、っ……っひく……うー」



あたしは泣きながら謝ることしかできないでいた。



「なんで泣いてるの?」


隼田くんを見るとすごく困った顔してて。



言わなきゃ、だよね。

あたしは涙声で言った。


「なんかあたし、さっき失礼なこと言っ、たみたいで、怒っ、ちゃったんじゃないかって。そしたら、隼田くんうつむいたままだし、っ……、っ声低いしーっ」


また涙再発してしまったけど、これでちゃんと分かったはず。









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