ずっと、すきでした。
男子生徒の言葉でふと我に返る。

「ぁ…、私、神野。神野、憂」

「ふーん…」

目の前の1組のクラス表を見ながらそれだけ言うと、男子生徒はさっさと去ってしまった。


「人に名前を聞いておいて、何だったの…?」

いつもなら怒っている所だけれど、私は怒る気にならなかった。


そして数分後。
大分、生徒は減ってきたがそれでも見えない。



もう、いいや。
何とかなるでしょ。

諦めて踵を返したその時、

「神野」



ふと耳に飛び込んできた、低音ボイス。
…さっきの男子生徒の声だ。

ドキドキしながら振り返ると、男子生徒は

「1ーC」



それだけ言って私の前から姿を消した。



ぽかんとして、消えた後ろ姿をいつまでも見ていると男子生徒と入れ替わりで、前方から麻衣子が息を切らしながら走ってきた。

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