ずっと、すきでした。
ー三宅 章sideー



高校の入学式。




風に乗って落ちてくる桜の花びらをぼんやりと見つめながらゆっくりと歩みを進める





中学の時はいつも寝坊していたが、今日は入学式。





初日から遅刻する訳にはいかない。



朝が弱い俺は眉間に皺を寄せて深くため息をつく。




そして、その他にも苦手なもの。







「…」









クラス表の前に群がっている人、人、人。






俺は人混みとか苦手。





だから遊園地とかは冗談じゃない。





あまりの人の多さに、後からクラスを見ようと思い帰ろうとしたら目の前で黒い何かがもそもそと動いた。










頭…??





それは視界に現れたり消えたりしている。





視線を下げると、小柄な女子が背伸びをしたりしている。



「…」




クラス表が見えないのだろう。






気がつくと、無意識のうちに女子生徒の肩を叩いていた。







びくっ、と肩が跳ねる。








それを無視して女子生徒から名前を聞き出すとA組から名前を見て回った








1ーC





そう書かれたクラス表に彼女の名前はあった。



神野 憂




三宅 章




「…同じクラスか」



それに、神野憂…










どこかで聞いたことがあるような…。





独り言を呟いて、先ほどの場所に戻る。



やはりそこには、神野 憂が未だにクラス表を見ようと頑張っている。






周りに聞けばいいものを…。







馬鹿なやつ、と心で思いながら俺を見て驚いている女子生徒ー神野 憂ーにクラスを告げてからさっさと踵をかえす。






クラスに入るとたちまち女子に囲まれてしまった。





「三宅くんて、どこ中?」







「…」





「彼女、いるの?」






「…」










断固無視。







女って、こういうのがあるから面倒。





ふと視線を感じて顔を上げると、神野憂と目が合った。









何故かわからないが、自然と笑みが零れる




「おはよう、神野さん」






「お、おおおはよっ! あ、あの、先程は、」




挙動不審ながらも元気良く挨拶を返してくれる。







何かを言おうとしていたみたいだったが、
それを言葉にすることなく席に戻ってしまった。










また、話す機会があるかな。











そんなことを考えていたらあっという間に1日は終わりを迎えた。







< 8 / 54 >

この作品をシェア

pagetop