“毒”から始まる恋もある
『ああ、刈谷さんの書き込みがありますね』
「そう。そこで玉ねぎのワイン煮込みを食べたの」
『えっ?』
「赤ワインで煮てた。玉ねぎは丸ごとだけど切り込みが入っていて、大きな塊肉と一緒に煮られてた。味は違う。でも四月の新メニューだっていうところが一緒」
『そんな偶然、あるんですね』
「そこに、……徳田さんに連れて行ってもらった」
そこまで言うと、数家くんが息を飲んだ。
『徳田様が絡んでいると? 情報をリークしたとか?』
「分からないけど。つか、分からないから電話したのよ! ねぇ。私どうすればいいの? なんでこんな彼を疑う気持ちばかり湧いてくるのよ、付き合ってるのに」
最後の方はもはや【U TA GE】には関係ない話だ。
でも、それが不安で電話したんだってことが言って初めて自分で理解できた。
『……刈谷さん、今から出てこれます?』
「え?」
『電話で聞く話じゃないような気もします』
「でも、あなた忙しいんじゃないの?」
『うちの店にも関わることのようですし。でも、できれば十四時以降だと抜けやすいんですがどうでしょう』
「……わかった。行くわ」
『では、俺の携帯番号教えますので、何かあったらこっちにかけてください』
言われたままメモをとる。
私のはと言おうとして、「予約の時に伺っています」と返された。
電話を切って、息を吐く。
さっきより呼吸が楽にできるような気がして、体から力が抜けてくる。
どうしてだろう。
なんだかとても、心強いと思っている自分がいる。