“毒”から始まる恋もある
私の視線に、数家くんはバツが悪そうに肩をすくめる。
「褒められるのはありがたいですけど、モニターという立場にいるんだからちゃんと比較意見のようなものを出してくれたらいいのに、と常々思っています」
「そう」
「逆に刈谷さんはまだ一回だけですが、信用してますよ」
「どうして?」
「あなたの意見は率直ですし、納得できる部分も多いです。もちろん全部鵜呑みにするつもりはありませんけど、参考になる一意見だと思います。実際、痛いなと思われるようなところも突いてきますしね」
淡々と語られる言葉は、じわじわと私の体を満たしていく。
「だから、今回の件も。あなたがそれだけ不安に思うなら、徳田さんに何かおかしいところがあるんだろうと思ってます」
そんな風に信用されたことって今まであったかな。
……ああもう、なんなのこれ。
今の感情が分からない。力が抜けると同時に、視界が潤んでくる。
「今度行ってみます、【居酒屋王国】。その上で、もし徳田さんに何か関係有るようなら……刈谷さん?」
目の前の彼の声に焦りが加わる。こんな風に慌てふためく数家くんはなかなか新鮮だ。
……なんて、のん気に観察してられる状況でもない。
訳も分からず溢れてくる涙を、私はテーブルの上にあったナプキンで拭う。
ささやかとはいえアイメイクはしているんだから、涙は大敵なのに。
「ちょ、もしかして泣いてます?」
「ちょっと気が抜けただけよ」
いつもとは違うパンツルックで、目立たないメイクをしたからか。
今日は行動までいつもと違う。
こんな言葉一つで安心できるなんて。