“毒”から始まる恋もある
「それにしても、刈谷さんのパンツスタイルは初めて見ました。足が長いから、そんな格好も似合いますね。今日はなんていうか……」
最後の方を言いよどんだので、不審に思ってじっと見つめる。
数家くんはコホンと咳払いするとそっぽを向いて告げた。
「可愛いですね」
全身を巡る血の動きが速くなったのか、動悸が激しい。
可愛いと言われるのは嬉しい。
サダくんに言われる時はいつも夢の中に入り込んだようにふわふわしてくる。
でも彼に言われるのは、なんだか嬉しいよりも恥ずかしいが先立ってしまうみたい。
「か、からかわないで」
「からかってはいませんよ。本心です。一人で帰れます?」
「当たり前よ」
「ではお気をつけて」
駅で見送ってくれる数家くんに手を振る。
私を悩ませていた不安は、いつしかどこかに行ってしまったみたいだ。