“毒”から始まる恋もある


「来るのは誰? 部長クラス?」

「いえ。実際に行う私達のような方々で、計六名です」

「それに舞波くんと塚本くんが入る感じだな」


部長が付け足す。


「ふうん」


じゃあ、計八人ってことね。
そんな大人数じゃないんだな?

会食って言っても、私達と同じくらいの歳なら御膳とかはかしこまり過ぎだものね。
もっと気楽な感じで、……でも採用関係だもんなぁ。
うっかりな会話が飛び出しても怖いから個室のほうが安心っちゃ安心。

だったら社内でケータリングか? ……イヤイヤ、それもなんか味気ないわよ。


「……あ!」


あるじゃん。ぴったりなのが。

昨日行った【U TA GE】。
あそこなら小上がりに十人くらいまでなら入れそうだった。

襖もしまったし、鍋はまあ美味しかった。それに、鍋なら話下手な菫でも給仕役に徹することで間が持つといえば持つ。


「昨日行った店で良ければ。割引券も貰ったからあげるわ」

「え?」

「鍋がメインみたいだけど、味は良かったわよ。部長クラスにまでなるともうちょっといいとこじゃないとって気もするけど、皆私達位ならいいんじゃないかしら」

「そうですね。一度行ってみようかなぁ」

「それがいいかもね」


菫に割引券を突き出すと、困ったように私を見上げる。
何よ、その顔。喜びなさいよ。


「刈谷先輩、一緒に行って教えてもらえませんか?」

「は? 私? イヤよ。舞波くんとでもいけばいいじゃない」

「舞波さんいないですし。というか、舞波さんだと怒られるので」


里中くんにか。
知らないわよ。さり気なく惚気けるのやめてほしいわ。

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