“毒”から始まる恋もある

深夜のコンビニには、学生らしき一団がタムロしていた。


「刈谷さんも何か飲みます?」

「私はいいわ。こんな時間から飲んだら太るもん」

「あ、すいません」


恐縮されたわ。

あれ? 難しいな。
今まで会っても普通に会話していたはずだったのに、意識した途端にうまくいかないのは何故なの。

数家くんは結局麦茶を一本買い、店を出て直ぐ一気に飲み干す。
コンビニ備え付けのゴミ箱に入れ、はーっと息を吐き出した。


「すいません。夜中に呼び出して」


嬉しかったのに、謝られるのは面白くない。


「いいわよ別に。……心配してくれたんでしょ」

「ええ、まあ」

「仕事もう終わったの?」

「本当はまだなんですけど、店長に追い出されました」

「は? なんで」


見上げると、釣られたように数家くんまで上を見上げる。
顔を見ようと思ったのに何故逸らす!


「ねえ、なんでよ」


追い打ちをかけるように続けると、ボソリと小さな声で返事があった。


「……だからです」

「聞こえないわ」

「気になることがあるときの俺は、使いものにならないから、だそうです」


私の方にゆっくりと向き直った顔は、暗闇の中そこはかとなく赤い。


「……気になることって、なに?」

「それくらいは察してくださいよ。分かるでしょ」


分かるか。エスパーじゃないのよ。
そりゃ、こうしてわざわざ電話までくれて様子を見に来てくれることを考えれば、自惚れることはできるけど。

でも私、歳も上だし。
口も悪けりゃ性格も悪いし。
ただ面白がられているような気もしないこともない。

落ち着いて考えるととてもじゃないけど、イイ方になんて解釈できない。

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