“毒”から始まる恋もある
道場破りでもするような気分で、【U TA GE】の前に立つ。
意気込んだものの、……緊張はするな。
男の人に告白するのなんて、今までは勢いでやってこれたのに。
それこそ、軽く言えば言うほど成功率は高かった。
まあ、だから直ぐ別れるような相手ばかりが釣れたとも言える。
「刈谷さん」
「きゃああ」
突然後ろから声をかけられて、飛び上がるほど驚いた。
振り向くと、シャツにジーンズという私服の数家くんが立っている。
「あれ、私服?」
「今日は休みなんですってば」
確かにそう言っていたけど。
私服のイメージがなかったから変な感じ。
「なんか。……違う人みたい」
「そうですか? それより入りましょう。俺、腹減ってるんです」
お仕事の時より軽いエスコートで彼は私を店の中へと誘導する。
「こちらにお席ご用意してます」
と迎えてくれたのはつぐみちゃん。今日は営業スマイルね、と思って見つめていると不審そうな眼差しを向けられた。
しかし直ぐ私の意識は席の方に向かってしまった。だって連れて来られたのは小上がりだったんだもの。
「え? 小上がり?」
「そう。閉めれますしね」
「でも二人なのに」
なんか大人数の人に悪いっていうか。
「平日だから大丈夫ですよ。それに俺も今日はお客ですし」
数家くんが先にたって席に座り、私に向いを促す。
つぐみちゃんはお冷とお通しを置くとメニューを広げ、営業スマイルで呼びかける。
「お料理、直ぐお持ち出来ますが、お飲み物はいかがいたしますか?」
「ああ。俺はビールで。刈谷さん何にします?」
「料理は何系?」
「今日は和風です。お酒は、俺的にはビールか、柑橘系のサワーとかが合うと思いますけど」
「じゃあビールにするわ」
メニューを閉じ、座席の脇に置く。