“毒”から始まる恋もある


「でも信用してもらえるのは嬉しいので」

「そうね」


私もそうだわ。
信用されるのは、嬉しい。

だから、数家くんといるのは楽しい。
私の吐き出した“毒”も、あなたにかかれば“毒”以外の何かになる。
あなたがいると、私にも価値が有るような気がしてくるから。


「……好き」


思わずポツリと呟いてしまって、慌てて口を抑える。


「はっ?」


驚く数家くん。
ちょ、まっ、どうしよ。なんとか誤魔化さねば。


「えっと、あ、これ美味しい! 好き」

「あ、れんこんフライですか。なら良かったです」

「どうやって作るの? 家でも作れるかな」

「簡単ですよ。れんこんを切って水にさらして、青のりと塩を混ぜた片栗粉でまぶして揚げるだけです。でも副菜という感じですから、お家で作るのが面倒なときには、いつでも店に来てください」


上手いこと営業されて笑ってしまう。

料理に関するウンチク話やお店の人の話を聞いていたら、時間はあっという間に過ぎていく。


「こちらがデザートになります。こちらでお品物は揃いましたが、飲み物の追加とかはございますか?」

「刈谷さんどう?」

「んー、もういいわ。お腹も一杯」

「これで終わりでいいよ。房野、ありがとう」

「いえ」


つぐみちゃんが、ペコリと頭を下げて出て行く。


「デザートはアイスなのね」

「ええ。今日は自信あります」


小皿にのせられたまん丸のアイスはバニラと黄色のシャーベット。

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