“毒”から始まる恋もある


「ま、そんな訳です。刈谷さんこそ、徳田さんに夢中だったくせに、何処で俺を気に入ってくれたんですか。顔も歳も好みじゃないんでしょう。まして俺はスーツなんて着ませんしね」


膨れたような顔をされて今度は焦る。

嫌だわ。
好みのタイプを覚えられている。


「何いじけてんのよ」

「最初の頃の態度は、完全に眼中にありませんって感じでしたしね。俺にも男のプライドがあるというか」

「そりゃ……」


あああ。彼の顔が近づいてきて、なんだか追い詰められていく。


「……私の毒舌を嫌がらないからよ」


顔が熱くなっていくのが分かる。

もう言っちゃおうか、こっ恥ずかしいこと。
ずっと思っていて、言えなかったこと。

貴方なら、笑ったりしないでしょう。


「口が悪くて男の人から引かれてるのは自覚してるわ。でも、言いたいことをお腹に溜めて我慢とか出来ないんだもの。でも本当は可愛くて優しい、シンデレラみたいな女の子を羨ましいとも思ってた。呆れたり馬鹿にしたりしながら、心の底ではずっとそうなりたいとも思ってた。もちろん、なれるわけないってのも分かっていたけど」

「だから、“シンデレラの義姉”だったんですか?」

「……口の悪い私にはピッタリでしょ。貴方はそれを唯一嫌がらなかった人だったのよ」


いじけた気分で唇を尖らすと、数家くんはくすくす笑う。


「実は可愛いですよね」

「うるさいな……って、えっ?」


途端に視界が上がった。
数家くんに持ち上げられたからだ。

背中と腿に回った腕で支えられる。お姫様抱っこを縦でしたような感じ。

思わず周りを見る。
大抵が恋人同士とはいえ、どうなの、その周り見えてない感。


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