“毒”から始まる恋もある
だから、今の私に必要なのは出会いよ。
出会い頭にビビッと来るような、インパクトのある恋がしたい。
それこそ坂道を転がり落ちる勢いで、幸せに向かいたい。
そのためには人のいるところに出歩くのはまあいい事か。
どこに出会いが転がってるかなんてわからないものね!
気を取り直して、化粧をきっちり直し、服装をチェック。
この間買ったラメ入りのストッキングはいてくりゃ良かったな。
つけまつげももうちょっと盛っても良かったかも。
まあいいわ。
今出来うる限りの戦闘態勢は整えた。ナンパでも何でもバッチコイよ。
「刈谷先輩お待たせしました」
化粧室にかばんを抱えた菫がやってくる。
仕事が終わったという安心感が素直に顔に出ていて、確かに可愛いって思わないこともない。
普通の男なら癒されるって思うんだろうし、性悪な男ならこれをグチャグチャにしてやりたいとも思うだろう。
「……素直な女って得ね」
「え?」
「なんでもないわ、行きましょ」
天然で男心をくすぐれるなんてズルいと思う。
しかも自分がどれだけ恵まれてるかも気付かずに卑屈になられるんじゃやってられないわ。