“毒”から始まる恋もある
*
そんな訳で、午後七時。私達は【U TA GE】の前に二人で並んでいる。
「ここ? 本当に鍋のお店なんですか?」
「そうね。私も最初はびっくりしたわ」
白い壁に黒い飾り枠の窓。外から見ると洒落たレストランというイメージのこの店は、入ると漂う和風な匂いに一瞬たじろぐ。
「いらっしゃいま……あれ」
やってきた店員はできれば会いたくなかった昨日の数家さんだ。
私を見るとただでさえ笑っていた顔を更に崩す。
「昨日の、……刈谷さまでしたね。いらっしゃいませ」
うげ。
覚えているのかよ。
こういう時は気まずいから気づいても言わないで欲しいんだけど。
「割引券もらったしね?」
「ニ名様ですね。どうぞこちらへ」
数家さんはスマイルを崩さないまま私達をテーブルへと案内する。
いくらスマイル0円とは言え安売りし過ぎじゃないのってくらい。
ふと隣を見ると菫が緊張した面持ちで辺りを見回している。私は肘で菫を小突いた。
「な、なんですか?」
「十名程度の宴会が可能か聞いてみなさいよ」
「でも、……ちょ、ちょっと様子見てから」
でたわ。
どうしてこの子はそう気弱なんだ。
別にいきなり予約するわけでもないし、聞くだけ聞いてみりゃいいじゃないのよ。
そんな訳で、午後七時。私達は【U TA GE】の前に二人で並んでいる。
「ここ? 本当に鍋のお店なんですか?」
「そうね。私も最初はびっくりしたわ」
白い壁に黒い飾り枠の窓。外から見ると洒落たレストランというイメージのこの店は、入ると漂う和風な匂いに一瞬たじろぐ。
「いらっしゃいま……あれ」
やってきた店員はできれば会いたくなかった昨日の数家さんだ。
私を見るとただでさえ笑っていた顔を更に崩す。
「昨日の、……刈谷さまでしたね。いらっしゃいませ」
うげ。
覚えているのかよ。
こういう時は気まずいから気づいても言わないで欲しいんだけど。
「割引券もらったしね?」
「ニ名様ですね。どうぞこちらへ」
数家さんはスマイルを崩さないまま私達をテーブルへと案内する。
いくらスマイル0円とは言え安売りし過ぎじゃないのってくらい。
ふと隣を見ると菫が緊張した面持ちで辺りを見回している。私は肘で菫を小突いた。
「な、なんですか?」
「十名程度の宴会が可能か聞いてみなさいよ」
「でも、……ちょ、ちょっと様子見てから」
でたわ。
どうしてこの子はそう気弱なんだ。
別にいきなり予約するわけでもないし、聞くだけ聞いてみりゃいいじゃないのよ。