“毒”から始まる恋もある

「ふうん。俺には詳しいこと分からないけど似てても違うんだな。だったら食べ比べ出来たら楽しいのに」


箸でつつきながら、ポツリとこぼした谷崎の一言に、皆が思わず目を向ける。


「……それいいですね」


本気の目を向ける光流。


「そうだな、面白い。ちょっと数家くん、店長を呼んでおいで」


北浜さんも乗り気になり、何故か光流に指示を出す。


「ちょっとお待ちください」


言うが早いか姿を消した光流は、数分後、不思議そうな顔をした店長さんを連れてきた。


「おお。片倉、久しぶり」

「北浜さん、どうも。どうです？　今日の料理は」


前に、北浜さんが店長とは昔からの知り合いって言ってた気がしたけど、どうやら本当みたい。
挨拶もそこそこに話始まった。


「こちらの谷崎さんの案で。ラタテュイユとカポナータの食べ比べメニューはどうかって」

「あー、似た他国間のメニューを合わせるってこと？　……そうだな。食べ比べってのは楽しいけど、企画として長続きはしないんじゃないか？　味は両方似たような感じになるしなぁ」

「そこはメニュー構成の見せ所だろう？」


北浜さんが挑戦的に笑う。
と、店長さんは「ふうん」と笑って、立ち上がった。


「よっしゃ。じゃ作ってみましょ。モニターの皆さんもせっかくいることだし、今食べてみて、同時に両方食べることが本当にいいのか確認してみようじゃないか。光流、ここは任せるよ。つぐみ、奥の手伝いに入って」

「はい！」


つぐみちゃんが背筋の伸びるような返事をして立ち上がり、奥に向かう。
残る北浜さんが、嬉しそうにニヤニヤと笑った。