“毒”から始まる恋もある
*
「ではまた、変更したメニューのお知らせを出させていただきますね」
試食しながら、食べ比べ用メニューの構想が膨らんだのか、光流は幾つか案を出し、皆で意見を交換した。
そしてたった今、お開きになったところだ。
帰ろうとしたら後ろから服を引っ張られた。
「史、帰る?」
「うん。まだかかるんでしょ?」
「片付けに一時間。待たない?」
「そうねぇ」
一時間なら待っててもいいかな、と思ったところで、谷崎が私の腕を掴む。
「刈谷、頼む。この後付き合え」
「ちょ、何よ」
「紫藤さんを誘ったんだけど、皆でって言っちゃったから」
「二人で話したいから誘ったんでしょ?」
そこで弱気になるなよ、ヘタレめ。
「北浜さんも大丈夫だっていうしさ。……ダメだ俺。酒入らねぇと調子でねぇよ。お前も来いって。頼む」
変なとこ情けないなぁ。
でもまあ、どうせ待たなきゃならないなら飲んで待つほうが楽しいか。
「……一時間だけならいいわ」
「恩に着る」
一部始終を聞いていた光流は、苦笑しつつ「飲み過ぎないように」と私に釘を刺す。
「大丈夫よ。悪酔いはしないから」
「上がったら電話するから」
見えないようにこっそりと指を絡ませて、私は彼らに続くように【U TA GE】を出た。
「ではまた、変更したメニューのお知らせを出させていただきますね」
試食しながら、食べ比べ用メニューの構想が膨らんだのか、光流は幾つか案を出し、皆で意見を交換した。
そしてたった今、お開きになったところだ。
帰ろうとしたら後ろから服を引っ張られた。
「史、帰る?」
「うん。まだかかるんでしょ?」
「片付けに一時間。待たない?」
「そうねぇ」
一時間なら待っててもいいかな、と思ったところで、谷崎が私の腕を掴む。
「刈谷、頼む。この後付き合え」
「ちょ、何よ」
「紫藤さんを誘ったんだけど、皆でって言っちゃったから」
「二人で話したいから誘ったんでしょ?」
そこで弱気になるなよ、ヘタレめ。
「北浜さんも大丈夫だっていうしさ。……ダメだ俺。酒入らねぇと調子でねぇよ。お前も来いって。頼む」
変なとこ情けないなぁ。
でもまあ、どうせ待たなきゃならないなら飲んで待つほうが楽しいか。
「……一時間だけならいいわ」
「恩に着る」
一部始終を聞いていた光流は、苦笑しつつ「飲み過ぎないように」と私に釘を刺す。
「大丈夫よ。悪酔いはしないから」
「上がったら電話するから」
見えないようにこっそりと指を絡ませて、私は彼らに続くように【U TA GE】を出た。