“毒”から始まる恋もある

続けて向かったのは『カメリア』だ。北浜さんの提案だけど、私はサダくんを思い出して少しだけ切なくなる。
今頃どうしているかしら。


「で、数家さんとはどうしてそうなったんですか? いつから? ぜひぜひ、後学の為に聞かせてください!」


どうやら紫藤さんはかなりの恋話好きらしい。
いつもの大人しそうな態度は何処へやら。楽しそうに前のめりになっている。


「まあ色々よ、色々」

「その色々が聞きたいんです!」

「……私を丸ごと受け止めてくれるような人だったからよ」


面倒くさくなって、一言にまとめて言うと、きゃーと歓声が沸く。

この子、……案外面白い子だったのね。
人って、ちゃんと話してみないとわからないものねぇ。

やがて、光流の電話をきっかけに私が抜けようとすると、「お先に失礼するよ」と北浜さんも空気を読んだ発言をする。

ようやく調子づいてきた模様の谷崎が眼鏡を直しながら私達を見送った。

頑張れ谷崎。
くれぐれも調子に乗り過ぎないようにね。

まあ、“だったら一緒に帰りましょ”って言わないんだから、そこそこ脈はあると思うわよ。

心のなかでエールを送った。


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