“毒”から始まる恋もある
お手洗いから出ると、ちょうど数家さんと出くわす。
下手に会話しているからシカトもなんだなとおもうけど、別に店員とする話もないしなぁと軽く会釈をしてすれ違おうとした時、ぼそっと彼がつぶやいた。
「……シンデレラの義姉」
「は?」
思わず飛び出してしまった大声。耳を疑い立ち止まった。
ちょっと待ってよ。なんで私のハンドルネーム。
……って、そんなのバレている訳ない。ただのひとりごとよ、きっと。
しかし数家さんは、私の反応ににっこり笑った。
「あってます? グルメサイト『E-MESI』の書き込み。誕生日ケーキのことが書いてあったんでもしかしてあなたかなと思ったんですが」
「なっ……」
バッチリバレてる!
なんなの。書き込みとか見るのかよ、店員。
「な、なんのこと」
「昨日、お誕生日でご予約会ったのは刈谷様だけですし」
いやでも、あの席には六人くらい居たわけで。
「書き込める時間にお帰りになったの刈谷様だけだったし」
お前仕事してんのかよ。
そんなこといちいち覚えているわけ?
こんなことなら真っ正直な本音など書かなければよかった。
さすがに気まずくてこの店に出入り出来ないわよ。