“毒”から始まる恋もある

「なら、皆で行きましょ。せっかくのご縁ですからね」


徳田さんが笑って話をまとめ、私達は小上がりから降りた。


「今日は皆様有難うございました。次回夏の限定メニューの際にまたご案内いたしますのでよろしくお願いします」

レジの前で数家さんはそういい、私達は店を出ようとするのだけど、思いもかけず私だけが呼び止められる。

「あ、刈谷様、契約書の件で少しお話があるのでいいですか?」

「え」


でも、今から飲みに行くんだってば。


「あーじゃあ先行っとるわ。刈谷さん、駅前のビルの三階に【カメリア】って店あるからそこに来て」

「あ、はい」

「ほな、行こう。ほらほら紫藤ちゃん、危ないで」

「きゃあ、すみません」


店の入口の段差に躓いた紫藤さんを徳田さんが助ける。
ああーいいな。数家さんに呼び止められなければ、あの位置にいたのは多分私だったのに。

くそー。チャンスを一つのがした。

三人が先に消え静かになった後、私はねめつけるように彼を見つめる。


「ちょっとこちらでお待ちくださいね」


数家さんはしれっとした顔で私を椅子に座らせると、もう一人の女性店員にはテーブルを片付けるように指示を出して追い払う。

そして数家さんは私の向かいの席に腰掛けた。
片付けに動いている店員はいるけど、店内の広い空間に二人で座っていると居心地が悪い。

しかも、笑っているのになんだか数家さん空気悪いんだもの。

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