“毒”から始まる恋もある
「ああ、倉庫と運送の。ウチの会社とも取引ありません? 多分倉庫をお借りしてると思うんですけど」
資材部の方から最近上がってきた伝票で見た気がする。
「そやったかな。自分の担当じゃないもんで、疎くてすんません」
「やだ。謝らないでください」
「でもあれやな。なんや、縁があるもんやなぁ」
「ですねぇ」
「ま、これからもよろしゅう」
にっこり笑って差し出された手を、握りしめる。
ゴツゴツしていた硬い手だ。でも肌が滑らか。営業さんは実際に荷物運んだりしないのかな、マメとか全くなさそう。
「あ、私は栄養士なんです。普段は老人ホームでメニュー作りとかしているんですよ」
「へぇ」
聞いてもいないのに紫藤さんが話しだした。
「せやねん。年取ったら紫藤ちゃんの世話になるかもしれんねんな」
「やだあ、徳田さん、まだまだですよう」
「そうだなぁ。いや、私はそう遠くないが」
北浜さんまで混じった。
いやいや、あなたもまだまだ老人ホームには早いわよ。
せっかく風格があるんだからダンディズムを極めればいいと思う。
でも。老人ホーム勤めとか、この子何気に出会いがないんじゃないのかしら。
酔った感じの話っぷりは舌っ足らずで、私はムカつくけど男は多分可愛いと思うだろう。
ただでさえ、私よりも先に彼女は徳田さんに出会っているわけで、ここはもっとガツガツいかないといい男がゲット出来ない。
私はますます前のめりになって会話に加わった。