“毒”から始まる恋もある

そこから三十分ほど話し、なんとなくお開きの雰囲気になる。


「ちょっとお手洗い行ってきます」


と、紫藤さんが抜け、北浜さんがお支払いをしている時に、私は徳田さんの服の裾をツンツンつつく。


「あの、せっかくですから連絡先教えていただけませんか?」


彼は目を丸くして、一瞬私をじっと見る。そしてその後人好きする顔で笑った。


「おーええよ」


ポケットから名刺入れを取り出し、一枚くれる。


「会社のじゃなく個人名刺。ケータイ番号書いてあるから。刈谷ちゃんのは後でおしえてな」

「は、はいっ」


やった。
こんな順調にいっていいのかな。

いやいや、今までの不幸はきっと今回の幸福の為にあったのよ。


「お待たせしました。あー。北浜さん、徳田さん。ごちそうさまでしたぁ」


戻ってきて直ぐに好感度が上がることを言う紫藤さん。

侮れないわ、この子。何気に女子力が高い。


「ごちそうさまでした」


仕方なく合わせてお礼をいうけれど、この場合好感度が上がるのは言い出しっぺだけだ。


「ええねん、ええねん。なぁ、北浜さん」

「もちろんだよ。また次回もご一緒できるのを楽しみにしてますよ」


素敵な紳士に笑顔を帰し、私達はそれぞれの方向の電車に乗り込んだ。


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