“毒”から始まる恋もある


 その夜、お風呂に入ってから改めて名刺をチェックする私。

個人用って言ってたけど、自分で作ったってことかな。
確かに会社で作るようなものじゃなく、名前とプロフィールが簡単に書いてある個人印刷のものだ。
たまに合コン用に作ってる人いるけど、彼もそのタイプかな。


【徳田 実国-Tokuda Sadakuni-
 営業やってまーす。
 お電話はコチラ→090-22●●-△352】


ちょっと軽いのだけが難点だよなぁと思うけど、軽いくらいじゃないと違う会社の人とは進展しないしなぁ。

どれどれ、ちょっと調査してみましょう。 
私はノートパソコンを広げ、東峰ロジスティックのページを見た。


ふんふん、もともと運搬会社なのね。
数年前から貸し倉庫業もはじめ、倉庫からの直接発送を売りにしはじめたことから、業績が伸びているらしい。

うちの会社も、海外から製品を取り寄せることが多いので、その一時預かりとして使っているのだろう、きっと。

まあなんによせ、伸びしろいっぱいの企業ってわけで、そこの営業さんってことは彼はやっぱり買い物件じゃないの。

それにしても実国とはまた珍しい名前だわ。
これをネタにお話しようかしら。

彼の番号をスマホに登録して電話をかける。


『もしもし、徳田です』

「あ、私、先ほどご一緒していた刈谷ですけど」

『おー、刈谷ちゃん。ホンマに電話してきてくれたんや。嬉しいわ』


最初は警戒していたような声が、一気に砕ける。
もしかしたら、待っていてくれたのかも知れない、なんて浮かれる自分の気持ちが止められない。


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