“毒”から始まる恋もある


「早速かけちゃいました。今お暇です?」

『ヒマヒマー。刈谷ちゃん、そんな丁寧な話し方せんでええよ。お仲間やし、砕けた感じでいきましょ』

「ホント? 実はちょっと堅苦しいなぁって思ってたの」

『そんなんのほうがええやん』


やっぱり彼は話しやすい。
軽い……と思うけど、間違いなく思うけど、だからこそここまで一気に辿りつけたわけで。

後は私がどれだけ彼に好印象を残せるかにかかっている。


「徳田さんって、何きっかけでモニターさんになったの?」

『俺はねぇ、食べ歩きが趣味なんやけど。で、たまたま【U TA GE】の店長とどこかで一緒になってなぁ。話ししとったら自分も店やっとるいうやん。だから食べに行って、盛り上がっとったら、店長が「色んな所で食べてそうだからモニターしてみないか」って』

「数家くんじゃなく店長からなのね」

『数家はあくまで雇われ人やで。偉そうに店仕切っとるけどな。でも便利やから任せしとるんだろうけど』


あれ、なんか言葉に悪意があるような。
数家くんって敵を作らないタイプかなと思っていたんだけど、実はそうでもない?


「社長はええ人やで。料理人やから経営とかちょっと無頓着やけどな。でも、熱い意志がある。ええもん作って、ええ店にしたいんやて」


それは数家くんにもある気がする。

料理は作らないって言っていたけど、店に対する熱意みたいなものを感じるし、単純にそこは凄いと思うけど。
姿の見せない店長よりも、私は好感度高いけどなぁ。


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