“毒”から始まる恋もある
*
翌朝、興奮のため寝不足だった私は、通勤途中からあくびが止まらない。
電車を降り、駅構内の階段を下っている時、先の方に菫と里中くんが見えた。
一緒に通勤か。なんだかやらしい方に邪推してしまうわ。
ぎゅうぎゅうの人混みの中、里中くんは何度も菫を振り返り、一言二言掛けては前を向く。
あの小娘が気づいているかどうか知らないけど、敢えて隣を歩かず前に位置取りしているのは、後ろからついてくる菫の通行路をしっかり確保するためだろう。
「……ホントいい男」
菫みたいになれば、あんな人に愛されるのかな。
オドオドして、人に頼って、人を癒やす笑顔を振りまく。
……とてもじゃないけど無理だな。一つとしてできる気がしないわ。
無益な事を考えるのは止めよう。それよりも、徳田さんとの未来について考えよう。
「おはよう、刈谷」
考え事をしている時に、後ろからポンと肩を叩かれて驚いた。
「うわっ、誰」
「そんなびっくりするなよ。オレオレ」
「オレオレ詐欺か」
「そうあなたの息子です……ってチゲーよ。何だそれ」
後ろにいたのは、眼鏡男子の谷崎だ。
今日は黒地にストライプの入ったスーツ。これよく見るからきっとお気に入りのブランドものなんだろう。
あ、ほら。また眼鏡直した。その仕草、もう見飽きたからやるなよ。
翌朝、興奮のため寝不足だった私は、通勤途中からあくびが止まらない。
電車を降り、駅構内の階段を下っている時、先の方に菫と里中くんが見えた。
一緒に通勤か。なんだかやらしい方に邪推してしまうわ。
ぎゅうぎゅうの人混みの中、里中くんは何度も菫を振り返り、一言二言掛けては前を向く。
あの小娘が気づいているかどうか知らないけど、敢えて隣を歩かず前に位置取りしているのは、後ろからついてくる菫の通行路をしっかり確保するためだろう。
「……ホントいい男」
菫みたいになれば、あんな人に愛されるのかな。
オドオドして、人に頼って、人を癒やす笑顔を振りまく。
……とてもじゃないけど無理だな。一つとしてできる気がしないわ。
無益な事を考えるのは止めよう。それよりも、徳田さんとの未来について考えよう。
「おはよう、刈谷」
考え事をしている時に、後ろからポンと肩を叩かれて驚いた。
「うわっ、誰」
「そんなびっくりするなよ。オレオレ」
「オレオレ詐欺か」
「そうあなたの息子です……ってチゲーよ。何だそれ」
後ろにいたのは、眼鏡男子の谷崎だ。
今日は黒地にストライプの入ったスーツ。これよく見るからきっとお気に入りのブランドものなんだろう。
あ、ほら。また眼鏡直した。その仕草、もう見飽きたからやるなよ。