“毒”から始まる恋もある


『会社の子と? ええよ。この間の罪滅ぼしも兼ねて』


夜、電話で菫たちと一緒に【U TA GE】に行きたいと話したら、サダくんは快く了承してくれた。


「都合はサダくんに合わせるわ」

『んー、あのメニュー、四月半ばからやったっけ? 歓迎会とか多い時期やさかいなぁ。……三週目の金曜……十九日の夜とかでもいい?』

「ちょっと時間遅くてもいいなら」

『ええよ。俺も二十時以降にならないと空かんし』

「じゃあ、予約は私がしておくから」

『おけー。数屋に見せびらかしたろ』

「なにをよ」


クスクス、笑いが止まらない。


「私、彼氏を誰かに見せるのって初めてかも」

「そうなん? 史ちゃんモテそうやんか。積極的やし、歴代彼氏一杯いるんとちゃうの?」

「それがそうでもないのよ」


確かに、彼氏(仮)なら結構いた。
数回デートしてそれで終わりになっちゃうくらいのなら。


「まあでも、史ちゃんの友達に会えるのとかは楽しみやわ」

「そっちのほうが若くていいとか言わないでよ」

「そんなん言わんよ。隣に史ちゃんおるのに目移りなんてせえへんて」

「ホント? 嬉しいな。ところで、週末は空いてる?」

「あー、今週末はダメやな。週末は最近あれやこれやと入ってて。来週の水曜とか、一緒にご飯食べへん?」


平日か。じゃああんまり一緒にいられない。
翌日仕事ならお泊りってわけにも行かないし?

最初の夜なら朝までのんびり一緒にいたい野望くらいはある。


「分かった」

「じゃ、またそん時に」


彼氏との会話ってこんなタンパクだったかな。長らく彼氏もいないからもう忘れたなー。

まあ、思いっきり好き合って付き合ったわけでもないから仕方ないのかぁ。
むしろこれからどんどん好きになってもらわなきゃだしね。


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