“毒”から始まる恋もある

「まあでも段取りだけつけておこうかな」


とりあえず日程を確認する為に、菫の携帯に連絡する。


『十九日……金曜ですか? ちょっと待って下さい』


音がくぐもったものに変わったのは、菫が手で抑えたからだろう。
ボソボソと聞こえる男女の声。里中くんと一緒にいるのね?


『刈谷先輩お待たせしました。金曜で大丈夫です』

「そ。じゃあ店の予約取っておくから」

『何から何まですみません。お願いします』


電話を切るとちょっとだけ虚無感。
あっちは二人でいちゃついているというのに、私はなんでこんな下働きのようなことをしているんだろう。


まあいいわ、次は【U TA GE】

勢いに乗ったまま電話をかける。


『はい、お電話ありがとうございます。【U TA GE】でございます』


流れるような声は数家くんのものだ。
何回か話していたら、声で分かるようになっちゃったなぁ。


「数家くん? 刈谷ですけど」

『ああ、刈谷さん。いつもありがとうございます』

「四月十九日の金曜、新メニュー食べに行きたいんだけど、予約いれたほうがいいわよね? あ、ちなみに四人」

「そうですね、金曜は混み合いますから。四名様ですね。お時間は?」

「八時からかな」

「小上がりがいいですか?」

「いいえ。テーブル席がいいわ。会社の後輩連れて行くから」

「ご予算とか決まってますか? デザートまで含めたセットメニューも作れますけど」

「そうね。食い合せの悪くない組み合わせで一人2000円分くらいの料理になるようにしてよ」

「食べ合わせですね。かしこまりました」


丁寧に言い直されて、しまったと思う。

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