“毒”から始まる恋もある
駅から更に歩くこと十分。
まだかよと思いつつ、たどり着いたのは倉庫っぽいコンクリ打ちっぱなしの外装に、木製の扉がついた風変わりな建物。看板には『居酒屋王国』と書いてある。
「ここ?」
「そう。居酒屋王国いうねん」
サダくんが扉を開けると、天井の高い空間が広がる。
壁に沿って幾つもの屋台が並んでいた。そこにも席はあるけれど、店にくっついていない席もいくつかある。中央には四角く囲まれたカウンターがあって、そこではドリンクを出しているようだ。
「え? え?」
「ここな、元は倉庫なん。で、色んな種類の料理の屋台が並んどるわけ」
「いらっしゃいま……あ」
「ええよ。分かるから」
よってきた店員を、サダくんが手で制する。
「こっち座ろか」
サダくんは私を引っ張ってきて、中央のバーカウンターのところに座らせた。
「好きなもん頼み。あ、俺はビールな」
「はい」
カウンターに居た男性店員はにっこり笑うと私にメニューをくれた。
「料理は適当に頼むで?」
「うん」
サダくんは近くの店員を呼び止めると、迷いもなくメニューを告げていく。
ここ、行きつけなのかしら。いかにも慣れた感じだし、店員さんの方も知っているような態度だ。
「ちょ、待ってサダくん。何料理頼んだ? 私、お酒と料理は合わせたい方なのよ」
「好きなもん頼みぃ。多国籍料理やもん、どの料理とは一概に言えへん。なんでも合うとすればビールやろ。俺と一緒にしよか」
「そうね」
「ほな、ビール二つな」
ビールは注文の数分後には出てきて、私と彼は乾杯する。
そのうちに直ぐ料理もやってきた。
チーズの春巻き揚げ、水菜とひじきのサラダ、ベトナム風生春巻き。
本当に多国籍で、なんだか訳がわからなくなる。