“毒”から始まる恋もある
「どうやった?」
「んー。面白いお店。ちょっと騒がしいけど」
「色々食べれてええやろ。また贔屓にしてやって」
「うん」
でも、接客態度はどちらかと言えば減点だった。
店内に目が行き届いていなくて、どこかのお客がこぼした飲み物はしばらくの間片付けられていなかったし、客がインプットされていないのか、料理の渡し間違いも結構あった。
二時間程度でそれが分かるのだから、普段からそう言ったミスは多いんだろう。
「そういえばここって倉庫街ね。サダくんのお仕事場の近くなの?」
「え?」
「ほら、東峰ロジスティック。この辺りだっけ?」
「あー、本社はちゃうで。でも倉庫はこの辺り」
「だからこの店に詳しいんだ。常連?」
「ま、そんなとこ」
時刻は十時半。帰ったら十一時を過ぎるだろう。
明日のことも考えればここらでお開きにするのがいいのかな。
彼もそう思っているのか、駅へと向かっていく。
「史ちゃん、家どこ? 送ってこか」
「あ、でも遠いよ」
「そうなん? なら一緒のとこまで行こか」
奥ゆかしさを演出したつもりが、アッサリと納得されてしまってちょっと残念。
まあでも、私酔ってないしな。足もシャンシャンと動く。
「ほな、次は十九日やな。楽しみにしとるから」
途中でサダくんのほうが先に降りた。
「気をつけて」
と手を振って別れる。
平日だからと尻込みしないで、お泊りで計画を立てればよかった。
なんとなく消化不良な気持ちを抱えつつ、私はスマホからいつもの口コミサイトを開き、『居酒屋王国』への感想を書き込んだ。
もちろん、ハンドルネームは“シンデレラの義姉”で。