“毒”から始まる恋もある

その後飲み物が来て、料理が来る。


「わあ、玉ねぎ丸ごと?」


菫が歓声を上げ、里中くんが匂いを嗅いで「ワインか」と笑う。


「酔うなよ」

「大丈夫、アルコール分はほぼ飛んでますから」


数家くんは、気を使ってか料理をよそってくれた。


「わあ、甘いし、柔らかい」


菫の歓声は、多分店の人間にとっては気分がいいだろう。
数家くんは終始ニコニコしていて、「次のお料理持ってきますね」と下がっていく。

私も箸をいれ、くしゃりと崩れていく玉ねぎを堪能する。
この間の『居酒屋王国』と比べれば、やっぱり味はこっちのほうが美味しい。チーズを加えたり、味のバリエーションも付けれるから飽きないし。


「ところで、彼氏さんが来る前に刈谷先輩の恋バナ聞かせてください」


菫が楽しそうにグラスを傾ける。


「私の恋バナなんて面白く無いわよ」

「そんなことないです。デートとかは? どんなとこ行きます?」

「そうね、飲んだりとか……あ、前は映画に行ったわ。【Confession book】ってやつ」

「ああ、それ今話題になってるよな。リピーターが多いらしいよ」


里中くんが楽しそうに話題に入ってきた。
なんでも、桐山さんが行って、興奮して内容を全部話されてしまったんだそう。


「面白いんですか?」


期待に満ちた眼差しをされても、あの手の後味悪い感じはなぁ。


「菫にはちょっと……じゃない?」

「ああ。多分ダメだと思う」


里中くんに振ると、ウンウンと頷く。


「えー、どんな話なんですか!」


前のめりになる菫に、大体の内容を説明していると、数家くんがポテトフライを持ってやってきた。


「……それ、【Confession book】のお話ですか? 面白かったですよね」

「あら、数家くん、観たの」

「ええ。定休日に」


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