“毒”から始まる恋もある
そのタイミングで、確かつぐみって名前だった女性店員がやってきた。
後ろにはサダくんがいる。
「ご歓談中すみません、お連れ様がいらっしゃいました」
「いらっしゃいま……」
振り向いた数家くんが固まる。彼の頭越しに見えるサダくんは、さも楽しそうに笑っていた。
「……徳田様?」
「よう、数家くん。久しぶりやな。史ちゃん待たせたなぁ」
「もしかして、お連れ様って」
「そうよ。残る一人は徳田さん」
「なんや、他人行儀な呼び方せんでもええやん」
彼はいそいそと私の隣に座り、正面の里中くんと菫に頭を下げる。
「遅うなって、えろう、すいません。徳田実国いいます。いつも彼女がお世話になっとります」
「あ、はじめまして。お待ちしてました」
里中くんが場をつなぐように笑顔をみせ、その会話を眺めながら、数家くんがポツリと呟いた。
「そういうこと、ですか」
それを聞いて、私は思わず顔を上げた。
普段営業スマイルを崩さない彼の呆然とした表情を見たらなぜだか私の胸がキリリと傷んだ。
理由なんて、分からないけれど。