“毒”から始まる恋もある
10.不安の種が芽吹く

 家に帰りシャワーを浴び、すっぴんのボサボサ頭でパソコンの前に座る。
そして、検索バーに『居酒屋王国』と入力した。

料理人の手元まで加えた料理の写真と並ぶ屋台を映した写真がまず目に入る。
コンセプトと限定メニューのご案内、至って普通の飲み屋さんのホームページだ。

どうやら二年前に開業したばかりらしい。
社長さんだという田野倉さんのコメントが載っている。


“和食・洋食・中華、すべての人が安心できる味を求めてこれるような、ふるさとのような居酒屋を作りました。それでいて、新しい味との出会いも忘れてはいません。常に新しい料理を求めて、料理人一同、誠心誠意を込めて頑張ります”


言っていることは正しい。
店の中には屋台が十件あり、直営が四件。
他は外部から呼んでいるようなのだけど、結構入れ替わりもありそう。

画面には倉庫内を上から見た状態の案内図と、それぞれの屋台に対してリンクが張られていた。
リンク先に飛べば、各店舗それぞれが管理しているメニューページがある。

限定メニューだけは特別に紹介されるらしく、TOPから見やすいところにリンクボタンが張られていた。
どうやら、玉ねぎのワイン煮込みは四月限定のメニューだっしい。


偶然、よね?

味付けとかも違うし、パクリなわけじゃない。
いやむしろ、メニューとして店に出るのは【U TA GE】のほうが後だ。

じゃあ【U TA GE】の方がパクリ?

脳裏に数家くんの顔が浮かんで首を振った。

そんなに深く知っているわけじゃないけれど、彼はそんなことしないと思う。

ああでも、メニュー作っているのは彼じゃないんだっけ。

顔を見せない店長?
彼はサダくんと親しいって言ってたわよね。

なんとなく、足元の地面が崩れていくような感覚がした。
誰を信じればいいのか分からない。

不思議なのは、恋人であるはずのサダくんよりも、数家くんのほうが信用できると思っている自分だ。

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