白黒の狂想曲~モノトーン・ラプソディー~
真白な世界
私の世界には白しかなかった。
壁も床も、もう何度目の夜を過ごすのかも分からないこのふかふかの布団も、ちょびっと私の匂いするまくらも。
全部が白だったんだ。
「…かさん。…うかさん」
真っ白な天井に柔らかいけどどこか強さを感じる声がぶつかって、仰向けに寝そべる私の元に降ってくる。
けど、私はその呼び方じゃ返事しないよ?
「はいはい。真白(ましろ)ちゃん、もうすぐ朝ごはんよ。起きましょうね」
桜色みたいにほのかなピンクのナース服。
私の病室を担当している看護師さん明奈(あきな)さんはいつも笑顔で私の元にやってくる。
長い髪を後ろで結わえてる、可愛いな。いいな。
ほのかな茶色は毛染めしてるのかな?元々色素が薄いのかな?いいな。
細いけど、ポッキリ折れちゃいそうなテレビで見るアイドルとは違うしなやかな腕。
明奈さんみたいな大人になりたかったなぁ。
「おはよ」
「明奈さんおはよぉ」
眠気眼を擦る手がほんのちょっとだけ痛かった。