白黒の狂想曲~モノトーン・ラプソディー~
「翔太は大丈夫だ。真白に怪我はないのか!?」
翔太に声をかけ、出血する耳を押さえながら振り返った院長は一言目にそれを叫ぶように言った。
その時ようやく私は自分の行いの誤りに気がつき、へたり込む様に座って大声で泣いた。
救急車で運ばれていく翔太と付き添いの院長を、院の先生に肩を支えながら見送った後はただただ部屋の隅っこで泣いていた。
その時、誰だかは分からないのだけれど私の肩を時おり優しく叩いてくれる人がいたんだ。
「……っと。すまんなぁ、そろそろいかなくちゃいけない。またすぐに来るからな」
そう言って院長は笑った。
「えっ--」
と、同時にクロが院長の後ろに現れたのだった。
「なんだ真白が寂しがるのは珍しいなぁ。そうだよな、真白はまだ12歳の女の子だ。
寂しい思いさせてすまんな。必ずまた近いうちに来るよ」
振り返る院長の視線の先にはクロが立っていた。
院長は何事もなかったかの様に病室を出ていく。
「クロ……?」
初めてだった。
クロが人がいるときに姿を現すのは。
初めてだったんだ。
こんなにも早くにクロがやってくるのは。
初めてだったんだよ。
クロが……
クロが寂しげな表情をしているのを見るのは。
何かが私を不安にさせる。
私の心か、鼓動か、命か、終わりか、それとも。