白黒の狂想曲~モノトーン・ラプソディー~
「そんなことはないよ」
「…え?」
唐突なクロの柔らかな否定に私はハッとして、クロを見た。
無表情なのに穏やかだった。
「そんなことないってなに?私今なにも言ってなかったじゃん」
胸の内がざわめいた。
発作の痛みとは違う、淀んだそれの正体が今の私には分からない。
「うん。でも、そんなこと考えてる気がしたから。
……そんなことないよ」
そう念をおすように言ったクロ。
ハッとしたように病室の外を見た。
私はそれが合図なのを知っている。
瞬きの間に消えてしまうから、無理矢理目を見開いたのだけれど、
「真白ちゃん。どうかな?」
明奈さんが現れるほんの数秒前にクロは消えていた。