密室ゲーム
自分は小学4年生の息子の世話で毎日忙しいのに、……浮気だなんて。
そんな不安と憤りの混じった気持ちもあったのだがそれよりも、
……ユウキを取った女が赦せない!
という気持ちが強かったからだ。
その女への憎しみが増すと共に、時間が許す限りパソコンで『浮気 復讐』という言葉を検索する日々。
そうなると当然段々と家事は手につかなくなっていく。そして仕事から帰宅したユウキからの文句が飛んでくる。
負の連鎖というものだろう。
しかも桜はこの負の連鎖から抜け出す事も出来ず、現実逃避へと走ってしまった。
朝からキッチンで酒を煽り、ひたすらネットサーフィンをし続ける。
そんな中、ユウキと息子のタケトは菓子パンを食べて家を出ていくのだが、それにすらネットに夢中の桜は気付かない。
そればかりか、夕方に息子のタケトが学校から帰ってきても声すら掛けない。
「お母さん。今日ね、あんちゃんがね」
タケトが桜に近付いてきて、そう楽しそうに顔を綻ばせ口を開いても、その声さえも桜には苛立ちを増す騒音に聞こえてくる。