密室ゲーム


由里子へ毒薬入りのお茶が渡るのかどうかという事にドキドキしながら、未だ修二の手にある2つの紙コップをじっと凝視する桜。


が、そこで修二が思いもよらない行動をとった。


「はい。哲夫さんどうぞ」と言いながら1つを哲夫に手渡し、残りの1つを渡す際に「後こちらを由里子さんに」と口にしたのだ。


そうやって渡されてしまえば、もう哲夫が選択する事は無くなってしまう。


名指しで渡された物を拒否し別の物にするなんて事は、そうそう出来るものじゃない。敢えて出来るのは、この場で自分勝手な言動をしている守くらいなものだろう。


当然、哲夫は修二に言われた事に頷き、由里子にと言われたお茶の入った紙コップを由里子へと差し出した。


その光景を目にした桜の口元が僅かにニヤつく。


そして、そのニヤついた口元を隠すように自分の手元にあるお茶を一気に口へと流し込んだ。


2つのお茶の行方は修二が決める事となったのだが、その決定が結果、桜の思い通りに事を進めてくれた。


由里子へ渡ったのは毒薬入りのお茶。


きっと修二は、綺麗な紙コップを女性の由里子へとでも思っての事だろう。

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