密室ゲーム
だが、部屋の中を何度も見て回っていた時に1つの壁に埋め込まれた鏡が修二の目に留まったのだ。
斜めから見ると自分の姿を映すただの鏡。
ただ真正面から見ると、何処かの部屋を映し出す。まるでキッチンの様な部屋を。
その部屋を映し出す鏡をじっと見ていると、突然、恩田桜の顔がグッと近付いてきた。が、修二に驚く事もなく、直ぐに何も見なかったかの様に離れていく。
修二には桜が見えたが、桜には修二が見えない状況。
つまり、この鏡がマジックミラーだという事になるのだ。
桜がお茶を用意すると言い、紙コップを折ったり、小瓶に入っている液体を紙コップに入れる場面も、修二はこのマジックミラー越しに目撃していた。
由里子の罪が『不倫』だった事もあり、由里子以外の唯一の女性である桜の憎む相手が、由里子だという事は直ぐに分かった。
だからこそ、受け取った何かの液体が入れられたお茶の入った紙コップを由里子へと渡る様にしたのだ。
飲んだらどうなるか?
修二にとっては、その疑問を解消する為にとった行動だった。
まさかそれで、由里子が死ぬとは思っていなかったものの、桜の手の内を把握出来た事に関しては、由里子の死すらも修二にとっては有益な情報になった。