密室ゲーム
よくよく目を凝らせば、その瓶には『毒薬』と書かれている。
つまり中身を知っていた桜は、由里子を殺すつもりでこの瓶の中身を紙コップに入れたという事だ。
「殺したい程憎い相手だった……って事か。……まあ、それは僕も同じか」
そう言ってふっと鼻で笑った相手は桜ではなく、自分自身にだ。
『憎む相手がいる』という内容を読んだ時点で、自分の一番憎む幼児誘拐殺人犯がこの中に居るのだと分かった。
そして修二は桜同様、直ぐ様その幼児誘拐殺人犯を殺す為の準備に取り掛かったのだ。
部屋に置かれていた酒に1ケース分の煙草を入れ、思い切り振る。それを暫くそのままにしておけば、完成する毒薬。
最後の仕上げに煙草を入れていない酒をトイレに流し中身を空にすると、その中に桜から借りた茶漉しの付いた急須を経由して毒薬となった酒を入れていく。
それをついさっき哲夫に飲ませ、殺した。
守の顔は知っており、由里子の罪は『殺人犯』ではなく『不倫』、桜は幼児誘拐殺人犯に狙われる存在。そこまで分かれば、幼児誘拐殺人犯が哲夫だと修二は簡単に断定出来きていたのだ。
僕も桜さんと同じだ。
そう思うと、再びドアへ向かって歩き出す。
そして5角形の部屋に戻ると、次は守が居るだろう部屋に修二は足を向けた。