学園世界のイロジカル
*

「お母さん!」



「なあに、零」



「この花は、なんて名前なの?」




淡い、紫色や桃色の


花弁が少し多い花が


僕の家の庭にはいつも、咲きほこっていた。






「それはね"ビスカリア"っていうの」



「びすかりあ?」



「そう。お母さんが1番好きな花よ」



そう言うと母は、園芸用のハサミで1本根元から切って、僕に渡した。




「零も、ビスカリアの心をいつまでも忘れちゃいけないわよ」



「びすかりあの、こころ?」



「零にはまだ難しかったわね。

あら、もう日が暮れるわ。お家に入りなさい」



「はーい!」




金色の美しい長い髪、透き通る淡い碧の目。


母は優しく、美しく、人を愛せる素晴らしい人。




「じゃあね、零」



短い夏が終わろうとしていたある日

夕暮れ時、日が街から消える。





この時の庭での会話が、


僕と母との最後の会話だった。







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