学園世界のイロジカル
「凄いわね、零君は…もうこんな問題まで解けるのね!」
「零君すごーい!!」
「俺にも教えて!!」
日本の名門私立小学校に入学して、早4年。
…最愛の母がいなくなって、早5年。
「ああ、この記号はルートって言ってさ…」
「る、るーと…?」
「さすがに難しいよな。
じゃあこう考えてみたらルートは分かりやすくなるぞ」
美しく、優しかった母と暮らしていたイギリスを離れ
実の父の元へと僕は来ていた。
最初は不安だった日本生活ももう慣れ、小学校でも楽しく過ごしている。
母の残した数々の数学書がなければ、僕は今のように明るくなかったのかもしれない。
数学者である母の残した数学書を読み始めたのは、母が事故で死んでからすぐ。
そして、ハマって一瞬で高校レベル数学を解けるのもすぐだった。
「じゃあみなさん、さようなら」
さようなら、と言えばもうみんな自由だ。
子供ながら重い肩書きを背負っているここの生徒は、このさようならの合図で学校にいる間下ろしていた肩書きを、また背負うことになる。
僕もそのうちの1人だった。
「零。終わった?」
「一也兄さん!」
「あ、零君のお兄さん!」
「優しいしかっこいいし、あの兄弟は最強だよなー」