学園世界のイロジカル
その時僕はまだ、知らなかった。

お母様が…その時の様子を、どんな心で見てたかなんて。













「じゃあ一也兄さん、おやすみなさい」



「ああ、おやすみ、零。また明日…」




随分遅くなってしまった。


もう11時だ。寝るのは12時過ぎるころだってあるけれど、お母様が心配するからこの時間には部屋に入るようにしているのに…




つい宇宙の話で盛り上がってしまったなぁ。



僕よりはるかに宇宙のことについては詳しい一也兄さん。

一也兄さんの家庭用プラネタリウム、何回見ても楽しい。



しかも音声より分かりやすい説明をしてくれる。



手に持っていた"天体解剖"という題のついたタイトルを見て、あの時の楽しさを思い出してつい笑そうになった。


僕も天体の本は母の形見で数冊あるけど、一也兄さんはもう十冊以上も持っている。


将来、宇宙研究者とかなればいいのに…いや、会社継がなきゃいけないか…



ちょっと憂鬱になりながら長い廊下を小走りで行く。



一也兄さんと僕の部屋は離れていた。


お屋敷の玄関を中心とするなら、中心にお母様とお父様の部屋、門から見て右側に一也兄さんの部屋が、左側に僕の部屋がある。



元々別の用途で使っていた部屋を僕の部屋にしたのだから、そりゃそうだ。



広いお屋敷だから、結構歩く。



そして、ちょうどお母様とお父様の部屋を横切った時だった。




声が、聞こえたのは。




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