学園世界のイロジカル
*


「マルコ先生?」



「ああ。世界屈指の大数学者だった」



「……だった?」




私の言葉に、零は少しうなずいた。



その表情からは…何も読み取れない。



たった今話された零の過去を思わせないその様子。



零のオッドアイは…生まれつきなんかじゃなくって、後天性のものだったんだ。



しかも、大好きだった義母にやられてできた…




「マルコ先生は、お母さんの知り合いだったそうです。

丁度探していた時に倒れこんだ少年を見てみたらたまたま聞いていた風貌と同じだったようで」




「へえ…じゃあ、運が良かったんだね、零は!」




私の言葉を聞いた零は…ふっと、馬鹿にするように。


そう…自分を馬鹿にするように、鼻で笑った。




「僕は、あのまま死んでしまった方が良かった、そう今でも思いますけど」



…な、なんで?


マルコ先生は良い先生じゃなかったってこと?




「いえ、とても良い先生でした」



「…また過去形」




「…僕が拾われ、数学の才能があることを知ったあの人はイギリスに僕を連れて行き

イギリスの学校に入れました。


小学校、中学校、高校を数年で一気に飛び級した僕は大学に入ることになります」




えっと…零が拾われたのが小4だから…中3までの5、6年で教育課程終了しちゃったのか…!?





「そこで数学コンピューター科に入り、僕は…

柊が言っていたでしょう、ある事件を起こしました」



…ここからだ。


零の哀しい過去は、これまでだけじゃない。これから、なんだ。



手をぎゅっと握って話に耳を傾けた…ところで



「うっ!…く、あ……!」



途端頭を抱えて苦しみ出した零を見て…私はすぐに動き出せなかった。



「な、ナースコール、ナースコール……!!


すいません、頭を抱えて…とても苦しそうなんですが…!早く、早く来てください!!」



頭を抑えながらベッドの中で悶える零の瞳は



どこか悲しげで。



そしてその瞳は、私を…いや、私の奥を見てる…?



ゆっくり振り向くとそこには…




「柊…!」


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