学園世界のイロジカル
さっきも聞いた同じフレーズに、ゆっくりうなずく。




「マルコ先生は零のことを『私が育てた中で1番の天才』と言っていた。

零の才能を世界が認める数学者が認めたとなると、世界中の数学コンピューターに関する研究所から零に『うちの研究所に来て欲しい』と言った」




「…相変わらず、零って凄いね」



「ああ、俺らと同じ年の頭脳だとは思えねえ。

まあそれはともかく、零には行きたい研究所があったから、マルコ先生にその研究所を告げたんだ」



缶コーヒーをまた一口飲んで、柊は一息つく。




「もちろんマルコ先生は『そこは良いところだから、探してみよう』とにこやかに笑って零の希望通りになるように努力した…


かのように見えた」




ふるふる、と首が横に振れる。

そこでなんとなく察してしまったその先を否定するかのように…私は首を小さく横に振っていた。




「たまたま聞いてしまったらしいんだ。

マルコ先生が電話で、とある研究所のリーダーと電話しているのを。

その研究所は零を強く勧誘したところでもあった」




『…ああ。大丈夫さ、零の希望している研究所からも勧誘が来ていたが断ったよ。

なあに、大丈夫さ。あいつは僕を信じているからね。

そして…金はどうだ?用意できたか?…良し、いい。じゃあ、零にそのことを話すとしよう』




「…零はその話の内容を聞いた時…絶望したそうだ。


やはり自分は孤独なんだ、と。そう痛感したそうだ」





そして、きっと事件は起こったんだ。



頭の中で繋がっていく、今までの零の言動。



いつも冷静な零が唯一取り乱した元凶…





「零はその場を黙って立ち去り、以降もマルコ先生とは以前と変わらぬ関係を続けた。


事件は…大学の卒業式の時に起こった」





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