学園世界のイロジカル
*


もう、誰も信じることなどできない。



挨拶をするために上がった壇上からの景色は実に滑稽。



あいつも、あいつも、あいつも…全てが下にいる。



そして、あいつ…マルコ先生も。




原稿用紙に書かれた言葉をスラスラ述べてゆく。僕の言葉に感極まった女子生徒がすすり泣くような声が会場のあちこちから聞こえた。



けど、みんな。幸運だったね。




ここからは…とても強い思い出の卒業式となるだろうから…





「みなさん。僕はこの年、ここの研究所に行くことになりました」



ステージに投影されたとある画像…そこは、僕を表の金だけでなく、"裏でも買った"研究所の画像だ。




「これを見てください」



Enterキーを…押す。


するとそこには、様々な研究所がマルコ先生の育てた者たちを裏で莫大な資金を使ってまで買った証拠である、明細のようなものが映る。




途端、ざわめく会場。


途端、消える泣き声。


途端、視線を集めるとある人物。




「これはマルコ先生が不正なやり方で今まで数々の人物を売った、

紛れもない証拠です!」




ざわめく会場の視線は、とある人物2人に降り注いでいる。


1人は、僕。




1人は…命の恩人である、親愛なるマルコ先生。




「な、なにを言っているんだ、零!

つまらないことはやめて、早く降りてこい!そんな偽装、お前の頭脳なら簡単なことだ!」



青ざめた顔でそんなこと言っちゃってさ。あー、かっこ悪い。




『解けない数学の問題はない』



そう言ったのはあなたではありませんか、マルコ先生?




「僕に解けない問題はないんです…マルコ先生」




僕は久しぶりに、口角を上げ…笑った。



噂で聞いた。



その時の僕は、まるで…






「さようなら、マルコ先生」







…死神のようだった、と。








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