学園世界のイロジカル
「……分かりたいよねえ、そりゃ」



「もちろん、俺はあいつを親友だと思ってるしな。

けどやっぱりあいつはあいつ。

俺を一定の距離から近付けさせない。もしかしたらあいつは無意識でそれをやってるのかもな」




マスターさんからもらった追加のクッキーをまたポリ、と一口食べる。



私も最後の一口となったアップルパイを飲み込む。




「……柊、私さぁ。

ガラでもないけど、自分がなんで存在してるんだろうって思ったことがあるんだよね」



「…へえ」




「けどそれを考えた数日後には吹っ切れちゃった、そんな感情。

私の存在を望んでないやつらがいるんなら、逆にいてやる!って思って」




椿らしいな、って言って柊は笑う。


…私らしい、か。



今の私と昔の、その時の私は…思考が違ったからなぁ。


らしいなんて言ったら…ちょうどその時から、今の私が生まれたのかもなんて考えちゃう。




「…俺さ、実を言うと結構金持ちの家に産まれたんだよね」



「お!いいなあ」



「良くねえよ、実際。

俺の存在を認めてくれたのは、1つ年上のメイドだけだったしさ」



1つ年上の……?

柊は12歳の時からここにいるんだよね?


……随分若いメイドだけど……




「拾われたやつだよ、俺の父親に。

いつもドジやってぺこぺこしてるけど、常に笑顔を浮かべてたようなやつだ。


そして昔から決して可愛くなかった俺にずっとつきまとってくれたやつだよ」




「柊はその子が好きだったりした?」




「ああ、好きだった」




予想してなかった返事に、思わず飲み込んだアップルパイが出てきそうになった…!


だ、だってまさか柊がこんなすんなりと…!




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