学園世界のイロジカル
俺以外にバスに乗車している人はいなかった。



運転手は優しい人だったと思う。



自分の身を考えている目じゃなくて、確かにあの目は、俺に対する同情の視線と、せめてこの子だけでもなんていう、人を助けようとする目だったから。




「少し…少しでいいんです。

村の姿を見ていいですか」



「…ああ」



1度バスから降りて、遠くを見つめる。



…俺は驚愕した。



山の一部、ちょうど村の部分が真っ赤になっている。



人なんか見えないのに、村人が泣き叫ぶ声が俺の耳にまで届いたきがした。





「…おい、君!?」




気づけば走り出していた。



距離にして、1kmあるかぐらいだったと思う。



トロフィーなんかバスに置いて、ひたすらひたすら走る。


地を蹴って、向かい風に立ち向かって、消防車の群をくぐり抜けて、赤々と燃える村へと一直線に。




「みんな…おババ様…おばちゃん…おじちゃん……


…ナミ……!!」





消防隊員の声なんか聞かず、燃える業火へと突っ込んだ。



熱い。熱い。今まで体験したことのないような熱さに、目眩がするほど。



< 360 / 533 >

この作品をシェア

pagetop