学園世界のイロジカル
「ここらへんは、見たところ城下町でしょうか。


たくさん店がある様子ですね」




確かに、周りを見れば多くの人たちが。



私たちぐらいの人もいれば、もっと大人の人もいる。



けど、やっぱり日本とは違う感じ…





「見て下さい、あそこもすごいですよ」




パッと身をひるがえし、反対方向に指をさした零。



実際指の先にはたくさんの行列があるんだけど…




零は薄い生地でできた、ストールのような緑色のマフラーをしていた。



それが良い感じに身をひるがえした時に風と共に舞って、少し長いマフラーに気付いて周りの人たちは零のほうへと目を向けた。




…いくら、少し気になって反射的に零を見ただけだとしても。



実際見てしまえば、皆が皆、目をしばらく離せられない。







「見て、あの人すごいかっこいい…!王子様みたい!」



「見たことないし、外部組じゃないか?」



「てゆーか、あれが噂の主席入学の人じゃない!?」



「それに、隣にいる子も凄い可愛い!美男美女じゃん!」







…零が注目されれば、必然的に隣にいる私にまで目線が集まってしまうのは当然で。





自分で言うのもあれだけど、私自身顔は整っているほうだと思うんだよね。



けど、零と並べば大分霞むと思う…だって、今の零は本当に”王子様”だもん。






「…やはり人ごみは嫌いですね。

ギャーギャー人を容姿だけで騒ぐ。うるさくてたまらない」





眉間にしわを寄せながら言い切ると、零はスッスッと私なんか忘れたように歩いて行ってしまう。




ちょ、どうしたの急に…!





「れ、零、待ってよ!」





「…すいません。


僕から提案しといてすみませんが、今日はもう帰りませんか?」





…え?



なんで?と口の先に出る寸前で、言葉を飲み込む。




なんか…聞いちゃいけない雰囲気がある。




今、零…すごい不機嫌そう。





「わ、かった…」





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