学園世界のイロジカル
私が知ってる限り……彼女が残したものは…2つ。


首元のチョーカーに触れる。



……彼女が遺したチョーカーを触れば、途端勇気が湧いてきた。






「…あんたはそれでいいの?」



「…言っておきますけど、俺はどっちでもいいのです。


俺は…沙羅という母親を覚えていません。

父を見て育ち、父を信じてきました。

父に従うだけです、俺は」





菊は…多分、自分は沙羅に愛されてない子って思ってる。


実の母親から、愛されてないと。




…確証はないけど、違うと思うんだ。



沙羅は、なんだかんだ優しい人だから。






「…どんな人でも、愛することができる人なの、沙羅は。

私は残念ながらその性格を受けつげなかったけどね」




「受け継がなくて良かったよ。

沙羅みたいなとんだお人好しになったら困る」




「ああ…確かに、

すごいお人好しだった」





目を閉じて、昔を思い出す。


笑っている沙羅の顔が次々浮かんで…




…悲しくなった。




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