学園世界のイロジカル
柊が真剣味を帯びた声で静かにそう言い終わった刹那。




人形たちは、不気味な笑顔を私たちに向けて…




消えた。





「違う、逃げろ!!」




その言葉が言い終える前に、私たちの10mぐらい前に急に現れた人形たち。



幼い少女から60代ぐらいのおじさんまで。



みんな生気のない目と、薄っぺらい笑顔で私たちを見つめている。





「左右にわかれろ!!」




その言葉に反応した私の脳が体に指令して、向かって右に私は走り出した。



同じく右に柊、ただ1人零だけが左に行ってしまう。





「クソ、おい椿!

お前、俺が指図するまで無理に動くんじゃねえぞ!!」



そう叫んだ柊は、パーティー用の白いキレイなテーブルクロスが汚れることなんて気にせずにテーブルに飛び乗った。




その衝撃で乗っていた花瓶が倒れる。


花瓶がパリイィンと割れ四方八方に水が飛び散るのと同じタイミングで、赤い薔薇が床に落ちた。





その音に反応した人形たちは一斉に振り向いた。




「おい、人形ども。


お前らの主人は俺を倒し、新歓に遅刻させろと言っているんだろ?」





彼は空中からタブレットを出すと、器用に画面を見ずに操作する。



すると彼の右手には、汚れもシワも1つもない白衣が握られていて。





「なんで白衣…?」



…白衣…白衣…


どこかで聞いた…



あ!



そういえば、柊の職は…!





「言っとくけど、俺はお前らのトリックなんてすぐ見破れるぜ?」




挑発するように、バカにするように。


とても整った顔の口をキレイに歪ませながら言う。




「俺は研究者。


奇術ならまだしも、手品だろ?



…手品を見破るのは、得意なんだ」





白衣を着た柊が、楽しそうに微笑む。


さっきまでの焦りの表情なんて嘘のように。




白衣を着て余裕が少し生まれたのかも…普段はずっと白衣らしいし。






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